ほんとうの「バカ」とは?
1991年、あるCMが話題になりました。
川べりの土手に桃井かおりさんがしゃがんでいて、視聴者に向かってこっそり同意を求めるように話しかけてくる…。
「世の中、バカが多くて疲れません?」
このCMが放送されると、たちまち苦情が殺到したそうです(「炎上」なんて言い方はまだありませんでした)。
「他人を「バカ」呼ばわりするとは何事か」みたいな内容が主で、自分が「バカ」といわれてる気がする、という人も多かったとか。話しかけている相手を「バカ」とは言っていないはずなのですが…。
ともかくそういう次第で、CMの放映はすぐに中止されました。
ところがしばらく経ちますと、またCMの時間帯に同じ風景が現れて、同じ姿勢の桃井かおりさんが同じ服装、同じ表情で「世の中…」と話しかけてきます。
「世の中、お利口が多くて疲れません?」
当時、実はCMの制作者たちが苦情の来ることを見越して、最初から「お利口」のバージョンも作っていたのだ、という話を聞いた覚えがあります。
これは噂に過ぎなかったようですが、たとえほんとうの話だったとしても不思議ではないほど、このやり返しは鮮やかでした。
つまり、「お利口」と「バカ」は表裏一体、ということなんだと思います。
それにもかかわらず、これは経験的にもいえることですが、「お利口」ほど「バカ」と呼ばれることを嫌います。そして自分の愚かな言動に気づかず、他人の愚かさにばかり敏感だったりします。
おそらくほんとうに「賢い」人というのは、自分自身も含めてどんな人間も大なり小なりバカである、ということを当たり前のことと理解して、そのことを前提として世の中を生きているのではないでしょうか?
もっとも、人間の愚かさを巧みに利用して利益を分捕ろうという「悪賢い」人もいますから、賢けりゃいいというわけでもないようです。
それにどんな賢い人も、よっぽど器の大きい人でない限り、ときには「お前ら、どいつもこいつも大バカだ!」と怒鳴りたくなることがあるのではないでしょうか? 自覚していたはずの自分自身の愚かさによって。
いっそのこと「バカ」を目指してみてもいいのかもしれません。
ただし「お利口」と表裏一体の「バカ」ではなく、純粋な「バカ」、ほんとうの「バカ」です。
アントニオ猪木さんも「馬鹿になれ!」と言っています。ほんとうの「バカ」とは「なる」べきものであって、必ずしも今の自分がすでにそうであるような「バカ」ではないと思います(必ずしも、というのは、生まれながらの非の打ち所のない「バカ」も世の中にはいるからです)。
…なんて小賢しいことを言っている限り、ほんとうの「バカ」にはなかなかなれないのでしょうけど。
猪木さんの「馬鹿になれ!」は英訳するなら、"Be fool!" ではなくて、"Freak out!" がふさわしいと思います。
"Freak out" といえば、デビッド・ボウイやレディー・ガガをはじめ、日韓も含めたたくさんの国の歌い手がこの言葉を歌っています。
しかし何といってもフランク・ザッパでしょう。彼が率いるマザーズ・オブ・インヴェンションの1stアルバム "Freak out!" を忘れるわけにはいきません。
そして、このアルバムの1曲目は…、"Hungry Freaks, Daddy"!
Hungry Freaksは、世界中の「バカ」たちを応援しています!
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