Hungry Freaks

アート、自然などをテーマにしたグッズをSUZURIとTシャツトリニティにて販売中。

SFといえば

「宇宙山海経」より(『中国怪談集』所収)

今週のお題「SFといえば」

 

5歳の「神童」が著した宇宙誌

河出文庫から出ている『中国怪談集』(中野美代子武田雅哉編)に、「宇宙山海経」という文章が載っています。

著者は江希張という人で、1911年生まれ。この文章を含む『大千図説』全3巻が出版されたときは満5歳で、「1,2歳で字を読み、3,4歳で文を書き連ね、5,6歳で道教、仏教、キリスト教イスラム教の各教典に注釈を施し」たと、編者の解説にはあります。

文章の内容はといいますと、この「神童がかいま見た、全宇宙のカタログ」とのことで、決してフィクションとして出版されたものではありません。

例えば金星には「人類が生息しており」「かれらは翼を持ち、五里以内の空中を飛行することができる。水に入っても死なず、火に入っても焼かれない。体は紙のように軽く、言語は蜂に似ている」のだとか。

太陽系では水星から土星までに、さまざまな生態をもった人類がいるとされています。また北極星系、南極星系の各々に属する星々についても、気候や地理的環境、そこに生息する人類などに関して、図版入りで簡潔な解説が記されています。

 

つまりは、著者の経歴も文章の内容も明らかにでたらめなのですが、ただのでたらめに留まらぬ、とてつもない想像力に驚かないわけにはいきません。

SFには「センス・オブ・ワンダー」が必要だとよくいわれますが、これぞまさに「センス・オブ・ワンダー」だと思います。

 

日本人が知らない「日本」

『中国怪談集』にはもう1編、「台湾(フォルモサ)の言語について」という文章も載っています。

著者はジョージ・サルマナザールと名乗る自称台湾人で、17世紀末にヨーロッパに渡ったとされています。

この文章は、18世紀初頭にロンドンで出版された『台湾――日本皇帝の支配下にある島――の、歴史および地理に関する記述』(歴史戦の人たちに見せるのはヤバいタイトルです)を構成する章の一つとのことで、こちらも決してフィクションとして世に出たものではありません。

主に台湾の言語について、文字、文法、用例などがかなり細かく記されているのですが、それと比較する形で日本語についても解説されています。

しかしそれが、どう考えても、私たちの知っている日本語ではありません。

男性名詞・女性名詞・中性名詞の区別があるとか、文字の連なりが右向きになったり左向きになったりしてカーブを描く「リバナトヒム」なる表記法があるとか…。

また、こんな一節もあります。

 

「日本人というのは、反乱をおこして中国から追放された人びとが、日本という島に定住した者たちなのである。だから、彼らは中国人を非常に憎んでいて、そのために、中国人と共通するあらゆるものごとを変えてしまったくらいである。彼らの言語、法律、宗教、習慣などなどを、である」

 

もちろんこちらの文章も、台湾に関する記述を含めて、すべてでたらめなのですが(著者の正体は詐欺師だったともいわれています)、あまりにも本当らしく書かれているため、読んでいるうちに、もしかするとこれはでたらめなのではなく、実在するパラレルワールドの日本なのではないか…と思えてきます。結構ゾッとします。まさに「怪談」であり「SF」です。

 

ちなみに『台湾――日本皇帝の支配下にある島――の、歴史および地理に関する記述』の全訳が、昨年平凡社ライブラリーより『フォルモサ 台湾と日本の地理歴史』というタイトルで刊行されています。

平凡社のホームページによれば、この書物は『ガリバー旅行記』にも影響を与えているのだとか。そういえばガリバーは来日していて、江戸で「日本の皇帝」に謁見しています。

 

 

Hungry Freaksでは、世界最初のSF映画「月世界旅行」を題材にしたデザインを販売しております。

ぜひぜひお立ち寄りくださいませ。

デザインTシャツ通販【Tシャツトリニティ】 (ttrinity.jp)

Hungry Freaks|デザインTシャツ通販【Tシャツトリニティ】 (ttrinity.jp)