「カゴメツユクサ」「カネラ」
今回のNEWデザインは、植物画を素材とした2点です。
「カゴメツユクサ」(左)はシャーリー・ヒバードの著書 “New and Rare Beautiful-Leaved Plants” に掲載されているものです。
制作したベンジャミン・フォーセットについて調べてみると、英語版のウィキペディアでは "woodblock colour printer" とあって、printerは印刷業者という意味になりますが、版木を自ら彫っていたようなので、浮世絵でいう彫師と摺師を兼ねていたようです。元の絵も自身で描いていたのかはよくわかりません。
同サイトにはベンジャミン・フォーセットによる一色刷りに別の人が手彩色した美しい絵が掲載されています。今回の「カゴメツユクサ」は多色刷りによるものです。
「カネラ」(右)はジェームズ・モース・チャーチルとジョン・スチーブンソンという19世紀イギリスの2人の医師が刊行した『薬用植物誌』に掲載されているものです。
この絵も2人のうちどちらかが描いたのかどうかなど、詳細は不明です。
カネラはカネラ目カネラ科カネラ属に属する植物ですが、カネラにはシナモンという意味があります。しかし通常シナモンと呼ばれている植物はクスノキ目クスノキ科ニッケイ属に属するとのことで、植物画の美しさにただ惹かれるのみで植物学に詳しいわけではない私には、何だかよくわかりません。
ともかく何だかきれいな絵だな、着てみたいなと思われた方は、TシャツトリニティのHungry Freaksをぜひ覗いてみてください。
ロバート・ジョンソン
「27クラブ」という言葉が、ロック好きの間でよく語られます。ご存じの方も多いかと思いますが、27歳で亡くなった有名ミュージシャンたちのことです。
ブライアン・ジョーンズ、ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリン、ジム・モリスン、カート・コバーン、エイミー・ワインハウス…。そうそうたる名前がこのクラブのメンバー表には連なっていますが、その筆頭にしばしば挙げられるのが、ミシシッピ・デルタ・ブルースの王様、ロバート・ジョンソン(1911~1938)です。
私がロバート・ジョンソンを知ったのは、確かローリング・ストーンズの『レット・イット・ブリード』に収められている "Love in Vain" の作者としてだったと思います。
彼の曲を収めたアルバムをレンタルショップで借りて、最初に聴いたときの印象は「何かよくわかんないけどスゴイ!」でした。当時すでにビリー・ホリデイは聴いていましたが、彼女にも通じる「ソウル」としか呼びようのないものに触れる思いがしました。
ストーンズによる "Love in Vain" は有名ですが、他にも彼の曲のカバーには名演がたくさんあります。クリームの "Crossroads" "Four Until Late"、ローリング・ストーンズの "Stop Breaking Down"、レッド・ツェッペリンの "Traveling Riverside Blues"、マジック・サムの "Sweet Home Chicago"…。挙げればキリがありませんが、私が個人的に好きなのは、晩年のギル・スコット・ヘロンによる "Me and the Devil" です。
ロバート・ジョンソンといえば「クロスロード伝説」が有名です。あいつのギターがすごいのは、十字路で悪魔に魂を売って取引したからさ。そんな話がブルース好きの間で広まったといわれています。
ところで十字路で悪魔、というのは実は珍しくない話です。といっても私は日本についてしか知らないのですが、「辻神」などといって、四つ辻に魔物や妖怪が現れるという話が日本各地に伝わっています。道祖神はそういう魔物を追い払うためのものとも言われています。
また沖縄の道端でよく見かける「石敢當」(私は沖縄在住ではありませんが、うちの近所でもたまに見かけます)も、これはY字路やT字路が多いようですが、やはり辻の魔物を退散させるためのものらしいです。
アメリカにも同じような言い伝えや信仰があるのかどうかは、私にはわかりません。
「クロスロード伝説」は "Crossroads Blues" と "Me and the Devil Blues" という2つの曲名からの連想に過ぎないのかもしれません。
どちらの曲も悪魔との取引のことなど歌ってはいません。彼が歌っているのは、あまり境遇に恵まれない人が抱える閉塞感や苛立ちであり、脱出へのあこがれです。
これらは100年後を生きる私たちにもよくわかる、普遍的な感情だと思います。だからエリック・クラプトンは、ロバート・ジョンソンこそがポップ・ミュージックのルーツだと言ったのかもしれません。
彼が27歳で死んだ死因については毒殺説(彼の女癖の悪さは有名でした)や病死説などいろいろあるらしく、はっきりしたことはわかっていません。
『ケロッグ博士』などで知られる作家T・コラゲッサン・ボイルの短編小説「おれの行く道は石だらけ、地獄の猟犬がつきまとう(Stones in My Passway, Hellhound on My Trail)」は毒殺説を元に、ロバート・ジョンソンの最期を描いています。
彼の死は特に報道もされなかったようで、その数か月後にプロデューサーのジョン・ハモンド(アレサ・フランクリンやボブ・ディランらを発掘した人)がカウント・ベイシーなど黒人ミュージシャンを集めたカーネギー・ホールでのコンサートを企画した際、ロバート・ジョンソンにも出てもらおうと必死に探し回って、ようやく彼の死を知ったといわれています。
おれの行く道は石だらけ
夜のように真っ黒だ。
おれのこころは痛みだらけ
食い気なんて消えちまった。
"Stones in My Passway" より
(「おれの行く道は石だらけ、地獄の猟犬がつきまとう」(青山南訳『血の雨 T・コラゲッサン・ボイル傑作選』所収)より引用)
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エジプトの神々「モンチュ」「ネイト」
今回のNEWデザインは、レオン・ジャン・ジョゼフ・デュボアという、フランスのイラストレーターであり、ルーブル美術館のキュレーターでもあった人物が描いた、古代エジプトの2柱の神々です。
いずれの絵も、ロゼッタストーンの解読者として知られるシャンポリオンの著書『エジプトのパンテオン』に掲載されたもので、遺跡に残った壁画を鮮やかな色彩で再現しています。
モンチュは「戦いの守護者」として主にテーベで信仰されたようで、ハヤブサの頭を持ち、太陽と2枚の羽根飾りを頭につけています。
ネイトは古代エジプトの神々の中でもかなり古くから信仰されていた、戦いと狩猟の女神です。また知恵の女神ともみなされ、ホルスとセトが王位をめぐって争った際に仲裁に入ったともいわれています。
翼のついた姿で描かれるのは珍しいかと思いますが、頭が3つ(女性の顔の両脇にライオンと鷹(?))あるところからすると、他の神々との習合関係を表しているのかもしれません。シャンポリオンの著書を読んでいないので、はっきりしたことはわからないのですが。
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オーブリー・ビアズリー
白黒ツートーンの鋭い対比、大胆な画面構成、頽廃的・耽美的な雰囲気、流麗な曲線、過剰なまでの装飾性…。
わずか25歳でこの世を去った、イギリスの世紀末を代表する芸術家オーブリー・ビアズリーは、21世紀の現代においても、世界的に人気の高い画家のひとりです。
ビアズリーといえば、何といってもオスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』につけた、一連の挿絵が有名です。
というより、これらの挿絵がなければ戯曲『サロメ』は今ほど有名になっていなかったかもしれません。
実際、ワイルドも版元も、この挿絵が本来の主役を食ってしまうのではないかと恐れたようです。
「『サロメ』はワイルドとビアズリーの美学の戦いの場となった。ビアズリーはワイルドの世紀末のダンディズムがヴィクトリア朝のスノビズム(俗物性)を引きずっていると嘲笑し、ヴィクトリア朝そのものに戦いを挑んだ」(海野弘『世紀末の光と闇の魔術師 オーブリー・ビアズリー』)
そんな「葛藤」が二人の間にあったことを考えると、ビアズリーの挿絵がついた『サロメ』刊行の翌年に、ワイルドが同性愛の罪(20世紀半ばまで、イギリス全土で同性愛は違法とされていました。同性愛と異性愛の扱いが完全に同等になったのは1997年のことです)で逮捕された際に、全く無関係だったビアズリーが文芸誌『イエロー・ブック』の美術主任の座を追われる破目になったのは皮肉なことです。
つまり『サロメ』の成功によって2人はまるでコンビのように見なされていたために、ビアズリーまでもがワイルドのスキャンダルの責を負わされてしまったのです。
ビアズリーの作品にはしばしば猥褻なモチーフのものがあります。
なかでも古代ギリシアの喜劇『女の平和』(アリストファネス作)のために描いた一連の作品は、手淫、放屁、巨大な男根など、描きたい放題です。
しかしこれらの作品はさほど陰にこもったところがなく、むしろ大らかで、ある意味においては健康的であるようにも見えます。
ビアズリーのこういった大らかな性表現に、日本の春画からの影響を指摘する人もいます。
ビアズリーは死の直前、カトリックに改宗し、自分が描いた猥褻な作品を破棄するよう知人に依頼したそうですが、その願いは(幸いにも)聞き入れられませんでした。
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このインパクトのあるキャラクター(?)は「ブエル」といいまして、古くから伝えられる悪魔の一人です。
『レメゲドン』という17世紀の魔導書に収められている「ゴエティア」によれば、悪魔の序列10番目で、50の軍団を率いる「地獄の大総裁」なんだとか。
『ゲゲゲの鬼太郎』ではアニメ化のたびに登場するようですし、いくつかのゲームにも出てくるらしいので、ご存じの方は案外多いかもしれません。
使用した絵は、1818年に初版が刊行された『地獄の辞典』に掲載されているものです。パッと見たところ、確かに「地獄の大総裁」にふさわしい迫力なのですが、よ~く見ると、どことなく切なさを感じなくもありません。まるで私たちに、
「脚はもういらねえ、腕をくれ~!」
と訴えかけてるようには見えませんか?
大総裁のTシャツで、地獄のような猛暑をのりきりましょう!
はじめまして。
Tシャツ販売サイト「Tシャツトリニティ」で「Hungry Freaks」というショップを数年前から出しております。
このたびは、より多くの方にご利用いただければと思い、ブログを開設いたしました。
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実はブログを書くのはものすごく久しぶりでして、まだしばらくは勉強しなおさなければいけないことも多々ありそうで、しばらくは落ち着かないかと思いますが、どうか大目に見てくださいませ。
何とぞよろしくお願いいたします。